
乳がんは、今や多くの女性が向き合っている身近な病気のひとつ。
治療技術は年々進歩していますが
、抗がん剤やホルモン療法などの影響で、心や体に不調を感じる方も少なくありません。
そんな中、「自分の体質に合った、やさしいケアも取り入れたい」
と感じている方に、漢方薬という選択肢があります。
中医学では「弁証論治(べんしょうろんち)」といって、
体の状態や体質を見極めて、オーダーメイドの治療をしていくのが特徴です。
今回は、乳がんと向き合う女性に向けて、中医学で考える体質タイプと、そのタイプに合った漢方の活用法をご紹介します。
中医学から見た「乳がん」の原因とは?
中医学では、乳がんを「乳岩(にゅうがん)」と呼びます。
その原因はひとつではなく、次のような体のバランスの乱れが複雑に関わっていると考えられています:
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気滞(きたい):ストレスなどで気の流れが滞る
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血瘀(けつお):血の巡りが悪くなる
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痰湿(たんしつ):代謝が落ちて、体に余分な水分や老廃物がたまる
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正気不足(せいきふそく):本来の免疫力や回復力が落ちている状態
このようなバランスの乱れを整えていくのが、漢方の大きな役割です。
あなたはどのタイプ?乳がんと中医学の体質分類
① 肝気鬱結タイプ(ストレスがたまりやすいタイプ)
こんな症状があればこのタイプかも:
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胸や脇が張って痛む
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イライラや気分の落ち込みがある
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月経前になると症状が悪化する
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ため息が増える
おすすめ漢方薬:
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逍遥散(しょうようさん)
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柴胡疏肝散(さいこそかんさん)
ポイントケア:
深呼吸やアロマなどで、気の巡りをやさしく整えるのがおすすめです。
② 痰瘀互結タイプ(しこりが硬く動かないタイプ)
こんな症状があればこのタイプかも:
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乳房に硬いしこりがある
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痛みの場所が固定していて動かない
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舌が紫っぽい、苔が厚い
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肌のくすみが気になる
おすすめ漢方薬:
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海藻玉壺湯(かいそうぎょっことう)
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桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
ポイントケア:
血の巡りを良くする軽い運動やストレッチも、漢方の効果を高めてくれます。
③ 気血両虚タイプ(手術や治療で体力が落ちているタイプ)
こんな症状があればこのタイプかも:
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顔色が白っぽく、疲れやすい
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息切れやだるさがある
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食欲がわかない
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抗がん剤後の回復が遅いと感じる
おすすめ漢方薬:
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十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
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帰脾湯(きひとう)
ポイントケア:
無理せず休養を優先し、栄養価の高い食事を心がけましょう。
④ 肝腎陰虚タイプ(ほてりや乾燥が気になるタイプ)
こんな症状があればこのタイプかも:
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体がほてる、のぼせる
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寝汗をかく
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口が渇く
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ホルモン療法による不調がある
おすすめ漢方薬:
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六味地黄丸(ろくみじおうがん)
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一貫煎(いっかんせん)
ポイントケア:
冷たいものではなく、潤いを与える温かい食べ物やお茶を取り入れてみてください。
よしくに先生からのメッセージ
乳がんの治療は、体だけでなく心にも大きな負担がかかります。
だからこそ、自分の体とゆっくり向き合い、ケアを重ねることが大切です。
漢方薬は、西洋医学の治療をサポートする“補助の選択肢”として、とても相性が良い存在。
体質に合った漢方を上手に取り入れることで、QOL(生活の質)を高めたり、副作用をやわらげるお手伝いができます。
もちろん、自己判断ではなく、信頼できる専門家に相談しながら進めることが大前提。
その上で、東洋医学と西洋医学の“いいとこ取り”をして、自分らしく過ごせる毎日を取り戻していきましょう。